（中）　

　　　　　

　　
　　
　　　　　

　　　　

　　　　　

　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　５．新地蔵堂


　橋を渡り高架橋下の平城京の説明図を見て、佐保川の右岸堤防を歩くことになり、１０分ほど歩くと限界橋があり、ここのたもとに地蔵堂があった。佐保川の改修工事で出土したお地蔵さんを祀る。

　説明は看板に詳しくあったので省略する、佐保川は護岸工事が進みきれいになっているようだ。

　地蔵堂から限界橋を渡り住宅地の中を南下する。やがて地蔵院川を渡るがここも護岸工事中だ。そして次の目的地の稗田環濠集落の地域になる。

　　　　　上：地蔵堂と説明　　　下左：限界橋　　　下右：稗田へ向かう道



　　　　　　　　　　　　　　　　　６．稗田環濠集落


　佐保川沿いのひとつ中の道を住宅街の中を抜けて、30分ほどで稗田環濠集落（ひえだかんごうしゅうらく）にくる。

　環濠集落とは、周囲に堀をめぐらせた集落（ムラ）のことで、水稲農耕とともに大陸からもたらされた新しい集落の境界施設と考えられている。

　水堀をめぐらせた場合に環濠と書き、空堀をめぐらせた場合に環壕と書いて区別するという。

　稗田集落の存在を示す最も古い資料は、文安元年（1444）の「経覚私要鈔（きょうがくしようしょう）」で、古市胤仙が稗田の陣を敷いた事が書かれ、文明11年（1479）筒井氏が稗田を攻めて焼いているという。

　他の古文書などの史料がなく詳しいことは分かっていないというが、室町時代には、現在のような形になっていたと考えられている。

　戦国時代には、城砦的な役割をはたしていたと思われる環濠は、争乱のなかで農民たちが自衛のために造った施設で、農業水利の便を図るためのものでもあった。また、一時的に雨水をため、徐々に川に流し込むという、治水の役目も果たしている。

　東西約260ｍ，南北約260ｍの規模で、北東側は七曲りよばれる特異な形をしている。西側と南側は道幅が広く、Ｔ字形に交差したり、袋小路になっていて、遠くが見渡せない防御に適した構造。

　環濠は近代の改修により貯水能力を高め、今なお、昔の姿をよくとどめていて、稗田環濠は、大和の環濠の代表例として市文化財に指定されている。

環濠入口から集落内を抜けて突き当たると、左に森があり売太神社になる。この神社を中心として環濠が発達したともいえるのだ。

　環濠の周囲を歩くには農道になっている部分もあり、畑内を通ることもできないので、舗装された道路部分のは半分程度を見たことになる。

　　　　　　　　上：稗田環濠集落図　　中・下：環濠がそのまま残っている

　　　　　　　　後半部分（売太神社のお参り後次へ行く時に回る）
　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　７．売太神社


　売太神社（賣太神社（めたじんじゃ））は、古事記編纂に携わった稗田阿礼（ひえだのあれい）を主斎神（主祭神）、天鈿女命（あまのうずめのみこと）、猿田彦命を副斎神（配祀神）として祀る。

　稗田阿礼命は学問の神、物語の神。天鈿女命は芸能の始祖神。猿田彦命は土地・方位の神であり、天鈿女命の夫神である。

　稗田阿礼は猿女君稗田氏の出で、天鈿女命は猿女君の祖神・氏神という。稗田は天鈿女命を祖とする猿女君稗田氏の本拠地であり、祖先の廟祠として推古朝時代までには創建されたものという。

　奈良時代には、稗田集落西辺に、平城京に通じる水陸両用の主要幹線道路である「下つ道」もあり、そこから多数の祭祀道具が発掘されたため、かつてこの神社は平城京の羅城門付近に存在していた。

　都に出入りする人々の穢れを払い、また、交通の安全を祈願する神事の場所でもあったことから、道祖神としての役割もあったとされる。

　社名の由来は、猿女君が天皇より多くの養田を賜り、その田を猿女田と呼び、その持ち主を猿女田主と呼んでいたため、後に「猿」の字を略して女田主と呼ぶようになり、その祖神を祀るこの神社を「賣太神社」と称する事になった説が有力という。

　稗田阿礼は、生没年不詳といわれ７世紀後半から8世紀初頭の、飛鳥時代から奈良時代にかけての人物。

　『古事記』の序文に、天武天皇に舎人として仕えており、28歳のとき、記憶力の良さを見込まれて『帝紀』『旧辞』等の誦習を命ぜられたと記されている。元明天皇の代、詔により太安万侶が阿礼の誦するところを筆録し、『古事記』を編んだという。

　
　　　　　　　　　　　　　売太神社由緒と古事記説明



　　　　　　上：売太神社鳥居と本殿　　　　　下左：語り部の塔　　　下右：稗田阿礼碑